発汗は、体温調節を行うために起こる大切な仕組みです。体温が上がると汗が出て、汗の気化熱で体温を下げます。
一方で精神的な緊張や、ストレスも原因となります。
多汗症とは、暑さや精神的緊張により多量の汗が出て日常生活に支障をきたす状態のことを言います。
明らかな原因疾患なく起こる多汗症を原発性多汗症と言い、原発性多汗症にはいろいろな治療方法があります。
治療方法 | 当院での治療 |
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1.外用:10% ホルマリン、20~50% 塩化アルミニウム、エクロック®ゲル、ラピフォートワイプ | 可 |
2.内服:抗コリン剤、自律神経調整薬 | 可 |
3.イオントフォレーシス | 不可 |
4.皮下注射:ボツリヌス菌毒素 | 一部可 |
5.手術:交感神経遮断術 | 不可 |
6.レーザー治療 | 不可 |
エクロック®ゲル5%は2020年9月に、ラピフォートワイプ 2.5%は2022年5月に承認された保険処方のできる原発性腋窩多汗症の外用薬です。また、アポハイドローション® 20%は2023年3月に原発性手掌多汗症に対して承認されました。発汗に関与する交感神経から出るアセチルコリンのムスカリン受容体への結合を阻害し、エクリン汗腺への刺激を阻害することで汗の分泌を抑えます。毎日の適切な外用を要します。
ここで紹介するのはボツリヌストキシンの腋下への皮下注射です。2015年に「重度の原発性腋下多汗症」に対して保険が適応されました。
原発性とは原因疾患がないということです。温熱や精神的負荷の有無に関わらず、日常生活に支障をきたす程の大量の発汗を生じる状態を原発性多汗症と言い、腋窩に対してのみの適応が認められました。
遺伝的な背景もあると言われていますが、本邦の原発性腋窩多汗症の発症年齢は19.5才、有病率は5.8%という非常に高い割合です。社会的な活動範囲が広く、生産性のある年代の罹患率が非常に高く、このことによって恥ずかしいといったような精神的な苦痛を受け、不安症や、対人恐怖症をきたす人も多いと言われています。
この治療の目的は治療により多汗の悩みから開放され、精神的、物理的な負担から開放されQOL(生活の質)が改善することを目的としています。
ボツリヌス菌が作り出すA型ボツリヌストキシンというタンパク質を有効成分とする薬を使用します。この薬を汗の出る部位に皮下注射をすると、交感神経からアセチルコリンの分泌抑制汗腺からの汗の分泌を抑えることができます。片方の脇に通常15から20箇所に注射を打ちます。16週間以上の間隔を空けてくり返すことが必要です。
ヨード液を塗布後、乾燥させてからでんぷんを振りかけます。発汗部位は黒紫色になるため、その範囲を計測して重症度および治療効果の判定に用います。
汗滴に一致して濃紫色の点が現れ、汗量が多いほど着色点は大きくなります。
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