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今回のコラムでは、「なぜ日本でリウマチを含めた膠原病という全身の病気をいろいろな科が診ているのかという理由」について、リウマチ専門医として考えてみました。 当コラムには、専門的な内容や用語が含まれておりますので、わからないことやご相談されたい内容などは、診察時にお気軽にお尋ねください。
なぜ日本でリウマチを含めた膠原病という全身の病気をいろいろな科が診ているのか。その理由をご存知の方は多くないのではないでしょうか。
アメリカでは、リウマトロジストと呼ばれる専門内科医が近代医学創立期から存在し、非常に高い地位を占めているのに対し、日本では、臓器を専門とした医師がプライドを優先するばかり、武器(治療器具)を自慢し合い、医師としての本来の仕事を忘れてしまっていると感じます。
本来はアメリカのように、リウマチ内科専門医が薬物療法、リハビリ、手術を一体として管理し、患者さんの全身管理をしていかなければなりません。リウマチ専門医のあるべき姿について考えます。
なぜ日本でリウマチを含めた膠原病という全身の病気をいろいろな科が診ているのかという理由は明治時代まで遡ります。
日本は近代醫學の導入にあたり臓器別醫學を基本とするドイツ醫學を選択しました。
感染症、癌などの治療技術は、すべて臓器別に発達しました。同じ原因菌なのに感染した臓器が異なるとその臓器の専門医が所属する。
医局の秘法伝授的な抗生物質の処方をします。
その結果、各科、各医局毎の非科学的自己流の抗生物質の乱用を招き、日本は世界一の耐性菌づくり大国になってしまいました。
癌もそうです。抗癌剤の使い方は非科学的な使用がまかり通っています。
その中で全身の病気である膠原病は最も遅れた分野になりました。
膠原病は最初に侵された臓器によってどの科で診るかが決まるのです。
皮疹があれば皮膚科、関節痛があれば整形外科、息苦しければ呼吸器内科、蛋白尿なら腎臓内科と、一人の患者、一つの病気なのにあらゆる科で複数の医師に診られています。
臓器別専門医は専門以外の臓器には興味がないので、診断治療が遅れ悲惨な運命をたどることが多いのです。
アメリカでは、リウマトロジストと呼ばれる専門内科医が近代医学創立期から存在し非常に高い地位を占めています。
日本では呼吸器科ならば気管支ファイバー、消化器科ならば胃カメラ、腎臓科ならば透析、循環器科ならば心臓カテーテル検査などを実施します。それが専門医であることのプライドになってしまっているのです。
一方臓器を持たない科、リウマチ科などは、臓器専門医から軽視される傾向があります。
しかし、臓器専門医は武器(治療器具)ばかりを自慢し合って、医者本来の使命を忘れ、患者を診なくなっています。
このような経緯で、関節リウマチは全身を診る内科と、関節を診る整形外科が混在して診るようになってしまいました。
ここ数年、関節リウマチの分野は飛躍的に進歩しています。高度化した薬の使い方をする疾患を、日常、外傷、手術に忙殺されている一般整形外科医が診るは困難です。 リウマチ内科専門医が薬物療法、リハビリ、手術を一体として管理し全身管理をしていかなければなりません。
開業医ではこの傾向がもっと顕著です。本来の開業医はプライマリーケア医(家庭医・かかりつけ医)であるべきなのに、ほとんどの日本の開業医は、非常に狭い範囲を専門にする医者が、総合病院でのポストがなくなり開業しているのが現状です。
内科も専門化細分化が進み、膠原病リウマチを診たこともない医者が開業しプライマリーケア医になっています。患者は開業医にプライマリケア医を期待して、内科と標榜されていれば全身を診れる医者だと思って来院するのです。
さらに、日本の医療保険システムでは、開業医はともかく多く患者を診なければ経営的に成り立ちません。
せっせと患者さんを1日中診て、夜はレセプト(算術医)の日々です。
リウマチも早期発見・早期治療の時代です。病院、診療所を問わず本当にリウマチを熟知し全身を診れる内科医にかかることが患者さんの将来を決定すると言っても過言ではありません。リウマチの専門医であれば、診療科目が異なる場合でも、総合的に患者さんの状態を管理することができるのです。リウマチ専門医にかかり、正しい治療を心がけることが、治療の第一歩です。
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