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医師コラム

膠原病リウマチ疾患に対して行政に望むこと

膠原病リウマチ疾患に対して行政に望むことを執筆しました。悪性腫瘍、脳血管障害、心疾患が死因として多いことは周知の事実であること、医療相談会での患者さんの声、難病特別対策推進事業と補助制度の対象についてお話します。

悪性腫瘍、脳血管障害、心疾患が死因として多いことは周知の事実

悪性腫瘍、脳血管障害、心疾患が死因として多いことは周知の事実と思われます。
しかし、「就職や日常生活に支障をきたし、健全な社会生活を妨げる疾患は何が多いか」という統計はほとんど知られていません。

恐らく、日本にはこのような資料はないと思われますが、以前、米国のNIHで出された統計では、身体障害を来す疾患ではリウマチ性疾患がもっとも多いという結果がでています。

平成7年に当院の職員検診受診者を対象に行った膠原病検診では、967名の受診者中、9名が膠原病、4名が臓器特異的自己免疫疾患でした。

また、当膠原病リウマチ内科外来に現在通院中の患者実数は約800名に上り(開設後5年間の受診患者数は2000名以上)であることを考えますと、膠原病、リウマチ患者数が従来知られていたより遙かに多いことが推察されます。

膠原病、リウマチ疾患は働き盛りの年代に発症しやすく、種々の臓器、器官の障害を伴う慢性疾患であることから、社会に対する影響も多大と考えられます。これまでの医療福祉行政では、社会的に話題となったAIDSや癌、臓器移植などの先端医療に力点が置かれていたような感がありましたが、今回、難病特別対策推進事業が行われることは、難病患者及びその家族、我々医療者にとって非常に喜ばしいことと思います。

医療相談会での患者さんの声

膠原病友の会やリウマチ友の会静岡支部会、難病連や地域保健所主催の医療相談会に出席して、患者さんの声を伺うと、膠原病リウマチの専門医の不足、静岡県内の専門医所在の不均一さを指摘する声が非常に多く聞かれます。
専門医の養成と、県内各地域に専門科を持つ病院を作ることは急務と考えます。

また、事業計画は難病医療ネットワークが主体ですが、さらに広く、難病患者ケアシステムの整備を行っていただきたいと考えます。
協力病院、かかりつけ医、市町村、保健所、訪問看護ステーション、在宅介護支援センター、ボランティア組織とのネットワーク作りは重要と思われます。
個々の患者において、どのような流れで社会的資源を活用していくか、さらに施設間で情報交換を行っていくシステムを作る必要があります。このケアシステムでは、外来、在宅でのリハビリテーションが落ちています。

多くの病院のリハビリテーション施設は整形外科、脳外科患者等で多忙であり、また膠原病リウマチなど難病患者を見る専門スタッフもいません。一般医療機関(開業医)のリハビリは物理療法が主体となり、十分なリハビリテーションが行えないのが現状です。

今回、国立浜松病院が浜松市に移管される際にリハビリ棟が作られる計画がありますが、専門スタッフ配置、訪問リハビリなど、膠原病リウマチなど難病患者が利用できるシステムを作っていただきたいと思います。

難病特別対策推進事業と補助制度の対象

今回の難病特別対策推進事業の対象疾患は、特定疾患調査研究事業の対象疾患を基準に選ばれているようですが、実際にはこの対象疾患には含まれていないが、同程度に難病と考えられる疾患は他に多くあります。
このような疾患患者を包括するような事業にしていただきたいと存じます。また、難病の定義を明確にする必要もあると考えます。

当事業の補助制度の対象となる備品が、人工呼吸器と患者モニター装置に限定されていますが、このような備品が必要とされるのは、神経難病か、生死をさまようような重篤な患者と思われます。しかし、難病は「致死的な疾患」と同義ではありません。

膠原病、リウマチ患者で人工呼吸器と患者モニター装置を必要とする機会はあまりありません。むしろ膠原病やリウマチの分野で入院加療を必要とする患者に必要なものは、治療の副作用対策、特に感染症予防(場合により個室、クリーンルーム)、しばしば保険適応外の診療を余儀なくされますがその医療費対策、長期入院に伴う患者、家族の生活保障や補助、心理療法士によるカウンセリングなどソフト面での対策が必要とされています。

補助制度の内容は、何が必要とされるか実際に難病医療に携わっている現場の声を広く取り入れて決定しなければなりません。

最後に

最後に、難病の医療、行政は、患者中心に考えるべきです。難病連や、膠原病友の会、リウマチ友の会など患者の意見を十分にとり入れた事業とすることを望みます。

難病特別対策推進事業とは

入院治療が必要になった重症の難病患者に対し適時適切な入院施設の確保ができるよう、地域の医療機関の連携による難病医療体制の整備を進める事業です。