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医師コラム

リウマチ診療における開業医の役割

なぜ日本でリウマチを含めた膠原病(以下膠原病リウマチ)という全身の病気をいろいろな科が診ているのかという理由は明治時代まで遡ります。

全身の病気をいろいろな科が診ているのかという理由

なぜ日本でリウマチを含めた膠原病(以下膠原病リウマチ)という全身の病気をいろいろな科が診ているのかという理由は明治時代まで遡ります。

日本は近代醫學の導入にあたり臓器別醫學を基本とするドイツ醫學を選択しました。
感染症、癌などの医療はすべて臓器別に発達しました。同じ原因菌なのに感染した臓器が異なるとその臓器の専門医が所属する医局の秘法伝授的な抗生物質の処方します。
その結果、各科、各医局毎の非科学的自己流の抗生物質の乱用を招き、日本は世界一の耐性菌づくり大国になってしまいました。

癌もそうです。抗癌剤の使い方にも非科学的な使用がまかり通っています。その中で全身の病気である膠原病リウマチは最も遅れた分野になりました。膠原病リウマチは最初に侵された臓器によってどの科で診るかが決まるのです。

皮疹があれば皮膚科、関節痛があれば整形外科、息苦しければ呼吸器内科、蛋白尿なら腎臓内科と、一人の患者一つの病気なのにあらゆる科で診られています。
臓器別専門医は専門以外の臓器には興味がないので診断治療が遅れ悲惨な運命をたどることが多いのです。

欧米では、リウマトロジストと呼ばれる専門内科医が全身を管理

欧米では、リウマトロジストと呼ばれる専門内科医が近代医学創立期から存在し全身を管理しています。
日本では呼吸器科ならば気管支ファイバー、消化器科ならば胃カメラ、腎臓科ならば透析、循環器科ならば心臓カテーテル検査などが、それが専門医であることのプライドになり、一方臓器を持たない科、リウマチ科などを軽視する傾向があります。
そのような経緯で関節リウマチは全身を診る内科と関節を診る整形外科が混在して診るようになってしまいました。

ここ数年関節リウマチの分野は飛躍的に進歩しています。高度化した薬の使い方をする疾患を、日常、外傷、手術に忙殺されている一般整形外科医が診るは困難です。一方、関節は整形が診るものと思い込んでいる内科医も多く、関節疾患に非常に弱いのも事実です。
膠原病リウマチ専門医が薬物療法、リハビリ、手術を一体として管理し全身管理をしていくのが本来の姿です。

膠原病リウマチを病院が診るのか

では膠原病リウマチを病院が診るのか、開業医が診るのかという問題になります。
日本では今述べたように膠原病リウマチ医療の体制は、日本は欧米に比べ遅れています。
欧米では、関節リウマチはリウマチ専門医による診断、活動性評価、治療方針決定が強く推奨されており、薬物療法は内科医、手術療法は整形外科医と役割分担され、ガイドラインの遵守が徹底しています。
したがって、一人の患者さんに対する治療方針は医者によりそんなに差異はありません。

日本では、歴史的に整形外科がリウマチを診ており、リウマチ内科医の歴史は浅く役割分担が混在し、しかもどの医者もリウマチ科を標榜でき、ガイドラインを遵守することもなく自己流の治療がなされています。
唯一のよりどころであるリウマチ登録医、リウマチ専門医資格も有名無実化しており、欧米のレベルの高い専門医とは格段の知識・経験の差があります。

リウマチ分野は飛躍的に進歩、高度化しています

何度も言いますがこの十数年リウマチ分野は飛躍的に進歩、高度化しています。
従って日本でも病院、開業医、内科医、整形外科医を問わずリウマチ専門医による診断、活動性評価、治療方針の決定がなされるべきで、その後の診療はプライマリーケア医(家庭医。かかりつけ医)が行うべきだと思います。

診療の過程で、治療に難渋したり、入院適応のある合併症、副作用が現れた場合に総合病院のリウマチ専門医に診療を委ねるべきです。

しかしほとんどの日本の開業医は、非常に狭い範囲を専門にする医者が総合病院でのポストがなくなり開業しているのが現状です。
内科、整形外科も専門化細分化が進み、膠原病リウマチを診たこともない医者が開業しプライマリーケア医になっています。
患者は開業医にプライマリケア医を期待し、内科と標榜されていれば全身を診れる医者だと思って来院するのです。
プライマリケア医はもっと膠原病リウマチに関心を持ち勉強しなければないません。

本当に膠原病リウマチを熟知し全身を診れる専門医、プライマリケア医にかかることが患者さんの将来を決定すると言っても過言ではありません。