医師コラム
関節リウマチの日常生活の注意事項
関節リウマチの日常生活の注意事項について医師よりお伝えします。リウマチのしてはならない10カ条と併せてご覧ください。
Ⅰ. 就寝と起床
- 蒲団よりベッドがよく寝具は体が沈み込んでしまわないやや固めのものにする。
- 寝る前に30分うつ伏せになったり、ベッド上で座って膝を伸ばす習慣をつける。これは股・膝関節の屈曲拘縮の予防に役立つ。
- 正しい姿勢で寝る。痛みの少なくなるような姿勢(丸まったり、膝を曲げたり)で寝ない。
- 睡眠は充分にとる。
- ベッドから急に立ち上がらず一度腰を掛け間を置いて立つ習慣をつける。朝は不用意に首を回さない。
- 朝のこわばりや関節痛がひどいときは主治医に相談する。(一般に夜の薬を遅くしたり、多くしたりする)
Ⅱ. 食事
- 特に禁止するような食べ物はなくバランスのよい食事をとる。太り過ぎは禁物。
- アルコールはリウマチのひどいときは避けるべきだが、普段は適当なアルコー ルは問題ない。
- 体を冷やすもの(清涼飲料水、かき氷、すいかなど)は避けたほうがよい。
- カルシウムは1日1500㎎を目標に取る。そのためには吸収率の良い乳製品(ヨーグルト、牛乳、チーズ)は必要。
Ⅲ. 歩行
- 体をリラックスさせ柔らかく歩く。「骨で歩かずに筋肉で歩く」
- 先細りの靴やハイヒールは禁物で、柔らかいスポンジでできた底の厚いもので 先太の靴を履く。
- 家の中では鼻緒のあるスリッパを履き外反母趾を予防する。
Ⅳ. 家事、日常動作
- 家事も運動療法。しかし、「家事をしているから体操はしなくてもよい」と言った考えは間違い。家事では意外に狭い範囲の限られた関節しか動かしていない。
- 長時間じっと立っていることは禁物で、関節軟骨を圧迫したままになる。膝を曲げたり伸ばしたりするような習慣をつける。
- 包丁の柄は太めに、片手で不用意に物を持たない、重いものはワゴン車で運ぶなど体の具合にあわせて日常動作を週間づける。
Ⅴ. 入浴
- 入浴は筋肉の疲れを癒し、痛みをほぐす。
- 入浴中や湯上がりの運動は効果的で、特に入浴中は浮力を利用して普段できないような動作(正座など)が可能になる。
- 過度の長風呂は禁物で、温めのお湯でせいぜい20分ぐらいにして疲れを翌日に残さない。
- できれば朝夕2回入浴した方が好ましい。
Ⅵ. 運動
- 運動はリウマチの症状、段階により個人差があるので、自分の運動療法については主治医に決めてもらう。
- "できる動作" と "している動作" があることをまず知る。"できる動作" とは、患者のもっている最大限の機能を指し、"している動作" とはいつもの生活の中で行っている動作のことで、"できる動作" を1日1度は少々痛くても最大限に動かす。
- 翌日に痛みの残るような運動はしない。
- 首の運動は原則として禁止(特に前屈位は)。首の骨に異常のない場合は医師の許可があれば可能。
- 筋肉を強くすることが大切で、特に関節を伸ばす筋肉を鍛える。
Ⅶ. 結婚
- 一般に1000人に3人がリウマチに罹っているが、母親がリウマチの場合、たかだか1000人に9人に増えるに過ぎない。
- 父親がリウマチの場合、母親の場合より遺伝性が高くなるといわれている。
- 結婚後の家庭生活では、特に周りの男性側の身内には嫁のリウマチの痛みが理解されにくくしばしば誤解を生じるので、主治医に、よくよく家族に説明してもらう。
Ⅷ. 出産
- 妊娠後リウマチは軽くなり、出産後悪化することが多い。育児の過労やストレスも悪化要因となるので、できるだけ周りの人に加勢してもらう。
- 出産後は一時的に少量のステロイドを投与しリウマチの再燃を防ぐこともある。
- リウマチの薬で胎児に影響を及ぼすもので
①禁忌:免疫抑制剤(メトトレキサート、イムラン、エンドキサンなど)
②影響を及ぼす薬:鎮痛剤(インドメタシン、クリノリル、ブルフェン)
③安全性の確立していない薬:抗リウマチ薬(メタルカプターゼ、リマチル、カルフェニール)、上記以外の鎮痛剤
④比較的安全な薬:少量のステロイド、生物学的製剤
Ⅸ. 家屋の改装
- 一階で暮らす。
- 部屋の内外に段差をつけない。
- 浴室、トイレ、廊下に手摺をつけ、寝室はなるべく近くにする。
- 車椅子で家の出入りや、室内移動を可能にするようにする。
- 台所は立ち椅子を利用できるスペースを設ける。
- 風呂桶は埋め込み型を、トイレは洋式にする。
Ⅹ. リウマチのしてはならない10カ条
- 高い枕
- 膝を曲げて寝る
- 正座する
- 和式トイレ
- 床からの立ち座り
- 長距離歩行
- 先細りのハイヒール
- 買い物袋をたくさん持つ
- 手拭や雑巾を絞る
- 蛇口の使用